アーティゾン美術館のクロード・モネ展と京橋駅周辺をぶらり歩いた一日【2026年5月】

Monet

アーティゾン美術館で開催中の展覧会 「クロード・モネ 風景への問いかけ」 を目的に、京橋界隈を歩いた一日の記録。モネだけじゃなく、館内の別フロアで思いがけず出会った展示にも足を止めることになった。出かける前は特に計画もなく、気づいたら夕暮れをとっくに過ぎていた。

銀座線京橋駅の地下から地上へ

銀座線京橋駅から地上に出る途中、複合施設の吹き抜けを見下ろしながら撮った一枚。
エスカレーターが斜めに交差するように走っていて、下を見るとガラス張りの商業フロアに人が流れている。

外の緑が奥に見えていて、まだ昼前の明るい光が差し込んでいた。

屋外から見た商業ビルの低層部にあるお店。
入口の前にはオレンジ色の椅子が出ていて、奥へ続くテラス席らしきスペースの両側に、ランタン風の照明が並んでいる。
夕方前の柔らかい光の中で眺めると、なんともおしゃれな雰囲気。

 

新旧の建物が隣り合う街角

青空をバックに、古い洋風のレンガ造りの建物と、ガラスカーテンウォールの新しいビルが並んでいる。
夕暮れ前の光がビルの間に差し込んで、影の濃い部分とのコントラストが鮮やかだった。
東京の都心部にいることを改めて実感するような景色。

幅の広い交差点から見上げると、縦に細いフィンが並ぶ高層ビルが空へ向かってそびえている。
夕暮れ前の斜めになった日差しが、ビルの側面に当たっていた。
周囲を取り囲む高層ビルの群れに、少し場違いな気分になり、自分がここにいていいのか、どこかそんな気持ちも湧いてくる。
それでも足を止める理由はなく、アーティゾン美術館のある京橋方面へと歩きはじめた。

   

アーティゾン美術館に到着

入口付近には工事の仮囲いが設けられ、オレンジのコーンが並んでいたが、それでもアーティゾン美術館はいつ来ても絵になる。
ガラス張りのファサードに、落ち着いた佇まい。
工事中であることを忘れさせるくらい、この建物はおしゃれだ。

隣にはクロード・モネ 風景への問いかけのポスター。
日傘を持った女性を描いた絵が使われていて、会期は
27日から524日まで。

 

館内に入ると大きなパネルが出迎え

ケットを確認して館内に入ると、すぐに目の前に大きな展覧会パネルが現れた。
左側には
Monet Questioning Nature のロゴと、日傘の女性の絵が大判で印刷されている。
右側の黄色いパネルには
「モネ没後100年 クロード・モネ 風景への問いかけ」 と縦書きで書かれていて、主催者として アーティゾン美術館、ミュゼ・ドルセー、日本経済新聞、NHK の名前が並ぶ。
白い床に照明が落ちていて、静かなトーンの空間。展示室に向かう前の、少し気持ちが引き締まる場所だ。

今回の展示はほとんど撮影可能だったので、気になった絵をいくつか撮った。
モネ以外にも見ごたえのある作品がたくさんあったので、順番に紹介していく。

モネの初期作品、ノルマンディーの農場

展示室の白い壁に金色のフレームの絵が掛かっていた。プレートには クロード・モネ 「ノルマンディーの農場」 1863年頃 とある。茅葺き屋根の農舎と池、牛、白鳥らしき鳥が描かれていて、木々の緑が全体を落ち着いた色調でまとめている。

印象派と呼ばれる前の、比較的写実的な時期の作品で、見えずらいが右下に「C.Monet」のサインが読み取れる。

バジールの描いたフォンテーヌブローの森

フレデリック・バジール 「フォンテーヌブローの森」 1865年。もともと絵画に詳しくないので知らない人だったが、モネと同世代の画家による風景画で、暗い緑の森と明るい空とのコントラストが印象的。暗くて見えずらいが岩が転がる地面の描写がなんとも言えない。

バジールは後に普仏戦争で若くして亡くなっているだけあって、残された作品数は少ない。こうして ミュゼ・ドルセー の所蔵作品が日本で見られるというのは貴重だなと思った。

ブーダンの空と水辺

ウジェーヌ・ブーダン「洗濯女のいる風景」(1873年)。広い空と鉛色の雲、干潟に停泊する舟が横長の画面に収まり、岸辺にはかがみこんだ人物が数人見える。

この絵はカーン美術館所蔵で、オルセー美術館からの永久貸与品とのこと。

ブーダンは私がずっと好きな画家の一人で、先日 411日~621 SOMPO美術館 で開催された「ウジェーヌ・ブーダン展 瞬間の美学、光の探求」でも作品を見てきた。外光のとらえ方に独特の感覚があって、モネが絵を始めるきっかけを作った画家とも言われているのもうなずける。モネへとつながっていく何かがこの空気の中にある気がする。

シスレーの雪景色、静けさがそのまま絵になっている

アルフレッド・シスレー 「雪の下でマルリー=ル=ロワの農場」 1876年。全体が白と灰色の世界で、一人の人物が雪の中に立っている。奥には赤茶けた建物が見えて、それだけが色のアクセントになっている。

シスレーの雪の絵は独特の静けさがあって、じっと見ていると風の音も消えていくような感じがする。小ぶりな画面なのに、冬の空気がそのまま閉じ込められているみたいだった。

モネが描いたオンフルールの雪道

クロード・モネの雪景色は、どこか静けさを閉じ込めたような作品が多い。1867年頃に描かれた「荷車、オンフルールの雪道」もそのひとつで、個人的にとても好きな絵だ。

茅葺き屋根の建物が道の両側に並び、奥へ向かってゆるやかに細くなっていく構図。積もった雪が白とグレーのやわらかな階調で広がる中、轍の黒い線だけが、ここを人や荷車が通り過ぎていったことを静かに示している。音のない世界に、かすかな気配だけが残っているような感覚がある。

ノルウェーの雪山とモネ

クロード・モネ 「雪中の家とコルサース山」 1890年代。赤茶けた木造の建物と、屋根を覆う雪、背後にそびえる山が描かれている。雪の白と山肌の橙色が混じり合っていて、寒い中の光の温かさが伝わってくる。

モネがノルウェーを訪れて描いたシリーズのうちの一枚。こんな遠い場所まで出かけていったのか、という素朴な驚きがある。

「かささぎ」の前に人が集まっていた

クロード・モネ 「かささぎ」 1869年。今回の展示の中で、この作品の前に人が一番多く立ち止まっていた。それもそのはずで、オーディオガイドの番号が振られていて、多くの人が耳にイヤホンをつけながら絵を見上げていた。

雪に覆われた庭の柵にかささぎが一羽とまっているだけの画面なのに、青い影の使い方が絶妙で、静けさの中に光がある。フレームも大きく、この展示室の中で特別な存在感を放っていた。

クロード・モネ 「アルジャントゥイユ」 1872年。曇り空の下、帆柱を立てた舟が川に停泊している。水面の反射が穏やかで、全体がグレーとグリーンの静かな色調でまとまっている。

対岸には建物と木が並んでいて、遠景がかすんで見える。モネがアルジャントゥイユに住んでいた時期の作品で、この川沿いで何枚も絵を描いていたことがよくわかる一枚。

レガッタの賑わいと水面の反射

クロード・モネ 「アルジャントゥイユのレガッタ」 1872年頃。白い帆が複数並んで水面に映り込んでいて、対岸には赤い屋根の建物と緑の木が見える。水の色は青というより緑がかっていて、筆触が細かく揺れている。

さっきの「かささぎ」とは打って変わって、明るく開放的な気分になれる絵。

三枚一組の小さな風景画

ひとつの木枠に三枚の小型の絵が並んで収められている珍しい展示形式。川沿いの風景、木立と小屋、帆船の停泊する港、それぞれ別の場所のような景色が横に並んでいる。プレートが複数あって、それぞれ別の作者・別の所蔵先の作品らしい。

何かセットとして制作されたのか、後から組み合わせられたのかは分からなかったけど、異なる季節感のある三つの風景が並ぶと、なんとも言えない旅の記録みたいな雰囲気がある。

旗がはためくトルーヴィルのホテル

クロード・モネ 「トルーヴィル、ロジュ・ノワールのホテル」 1870年。縦長の画面いっぱいに建物とはためく旗が描かれていて、手前のプロムナードには小さな人物が多数点在している。青い空と白い雲、建物の黄みがかった壁。

旗の描き方がとにかく大胆で、赤と白の筆が勢いよく走っている。夏の海辺リゾートの賑やかさが伝わってくる作品。

サン・ラザール駅の煙と光

クロード・モネ 「サン=ラザール駅」 1877年。鉄骨とガラスで覆われた駅の大屋根の下、蒸気機関車から立ち上る煙が駅全体を包んでいる。青と白の蒸気が光を散乱させていて、その向こうにパリの街並みがうっすらと浮かんでいる。

この駅を題材に同じ時期に複数枚描かれたシリーズのひとつ。現代の都市インフラを風景として絵にしたモネの視点は、当時としてはかなり異色だったはず。

赤と青がはじける630日のパリ

クロード・モネ 「パリ、モントルグイユ街、1878630日の祝日」 1878年。縦長の画面を、三色旗の赤・白・青が埋め尽くしている。窓という窓から旗が垂れ下がり、その下に群衆がひしめいている。

具体的な人の姿はほとんど描かれていないのに、お祭り騒ぎの熱気がひしひしと伝わってくる。色の塊が動いているような絵で、モネがいかに「光と動き」に執着していたかがよくわかる一枚。

ルノワールが描いたモネの肖像

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「クロード・モネ」 1875年。黒いコートを着て、パレットと筆を手に持ったモネが、こちらをほぼ正面から見ている。背後には描きかけのキャンバスらしきものが見える。

明るいルノワールの画風にしては、全体が暗めのトーンでまとまっていて、モネの強い眼差しが印象に残る。友人が友人を描いた、という気安さと真剣さが同居しているような一枚だった。

日傘の女性、丘の上で風に吹かれている

クロード・モネ 「野原の上で、日傘を持つ左向きの女性」 1886年。緑の日傘を差した女性が丘の上に立っていて、風に揺れる草と衣の動きが全体に広がっている。背景は空だけで、地面との境界もはっきりしない。

この展覧会のメインビジュアル作品。絵の前に人が多く、少し離れて全体を眺めた。

ロンドンの霧の中のウォータールー橋

クロード・モネ 「ウォータールー橋、ロンドン」 1902年。青紫がかったもやの中に石造りのアーチ橋が浮かんでいて、川面の反射がそのまま画面下半分を占めている。左下に小舟がかすかに見える。

ロンドンシリーズの一枚で、霧の描写がとにかく繊細。「Claude Monet 1902」のサインが読み取れる。

朝の光に溶けるルーアン大聖堂

クロード・モネ 「ルーアン大聖堂 扉口 朝の太陽」 1893年。大聖堂の正面ファサードが、粒子状の絵具の層によって再現されている。青みとオレンジが混じり合っていて、建物のかたちが光の中に溶けかけている。

ルーアン大聖堂シリーズは同じ建物を時間帯や気象条件を変えながら繰り返し描いた連作で、その中の一枚。実物の大聖堂より光そのものを描こうとした、ということが絵の前に立つとよくわかる。

睡蓮のある池に向かうフロアへ

展示の終わり近くに、日本の庭を思わせる睡蓮の池の絵を使った大きなパネルが設置されていた。
Monet Questioning Nature のタイトルと 「クロード・モネ 風景への問いかけ」 の文字が白く抜かれていて、緑と水面の色がバックを覆っている。

ここまで見てきた雪景色や川の絵とは打って変わって、緑に満ちた画面。ジヴェルニーの庭に向かう展示の転換点として機能しているパネルだった。

展示室を移動する途中、ガラス張りの仕切り越しに隣の部屋が見えた。
白い壁に金縁の絵が並んでいて、大勢の人が絵の前に立っている。
これ全体がまた絵画みたいに思えてくるから不思議だ。

カタリウムという展示、語りと絵画の間で

モネ展のフロアとは別に、アーティゾン美術館では「カタリウム」という展示も同時開催されていた。
「語り+
-arium」を合わせた造語で、「かつてどこかで、物語を聞く」というコンセプトらしい。
入口前のパネルには「
KA TA RIUM」と縦に配されたロゴと、日本の絵巻物を思わせる画像が並んでいた。

館内に進むと、金地の大型屏風が展示されていた。城下町のような場所に大勢の人が行き交う様子が、細密に描き込まれた屏風絵で金雲の合間から見える建物と人物の細かさに、思わず近づいて見てしまった。ガラス越しの展示なのに、人物一人一人の衣装の色まで確認できるほど精緻な仕事だった。

 

 

モネ展とカタリウムをひと通り見終えて、別のフロアへ降りると、細長い空間に版画が等間隔で並んでいた。
木製のシンプルなフレームに収められた作品が壁に沿って続いていて、全体のトーンは白と黒。
廊下の奥に向かって並ぶ作品を順に辿っていくと、線描きの人物や暗い背景のシルエットなど、作品ごとに表情が変わる。
二枚目に近づいて見た作品のプレートには「
26 XXI 死者の傍らで XXI Beside the Dead」とあった。頭を垂れて膝に手を置いた人物が、ざらついたテクスチャーの背景の中に沈み込むように描かれている。
モネの光に満ちた絵を見た後でここに来ると、また違った気持ちになる。

  

まとめ:光を追い続けたモネの世界に浸る、京橋美術散歩

京橋駅から歩いてアーティゾン美術館へ向かい、「クロード・モネ 風景への問いかけ」を鑑賞した一日。
展示では《かささぎ》や《サン=ラザール駅》、《ルーアン大聖堂》など、モネが光や空気、時間の移ろいを描き続けた作品をじっくり堪能した。
モネだけでなく、ブーダンやシスレーらの作品にも触れ、それぞれの個性を見比べられたのも大きな収穫。
さらに「カタリウム」やベン・シャーンの版画展示にも立ち寄り、一つの美術館で異なる時代や表現を巡る贅沢な時間となった。
モネの美術展は2024年10月に行った国立西洋美術館の「モネ 睡蓮のとき」以来だったが、京橋の街並みを散策しながら、美術と街歩きの両方を楽しめた充実の一日だった。

 

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